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コスキン・エン・ハポン2025ポスター制作者のコメント

コスキンエンハポン2025ポスター原画制作記
2025.09.16 大町 亨

「今回は本当に大変だった」と制作過程を思い出しながら、完成したポスターを感慨深く見ています。
いつもはテーマ・モチーフとも任せて頂いて原画を描いていましたが、今回は「アルゼンチンのスターであるスペシャルゲストのお二人を!」との熱いリクエストが実行委員会から寄せられたため、始まりはスムーズでした。
何も無いところからテーマを考えるのは小説を書くための骨格を作るようなもので、構想と取材のための、表面には現れない工夫と労力が要ります。
しかし今回はゲストのポートレートという設定。しかも一人は2019年のポスターで描かせて頂き、実際にお会いした事もあるカロリーナさん。なので、いつもより早く描き上がるのではないかと、たかをくくっていました。
甘かった!

まず、メインのモチーフを二人の笑顔にしようと決めました。そこに音楽家としての姿とコスキンエンハポンとの繋がりのイメージを組み合わせ、全体の構図を考えてキャンバスに下描き。次にアクリル絵具で固有色(服の色や肌の色など)の塗り分け。このあたりまでは順調。
いよいよ表情を決めるための陰影の描き込みに。ここで大きな壁を感じました。
形は笑顔に描けているはずなのに、二人の自然でエネルギーにあふれた楽しさ嬉しさ優しさが描けていない!描けば描くほどわざとらしい笑顔に見えてしまう。
絵描きにとって笑顔を描く事がいかに難しいかを痛感しました。ちょっとした加減で笑顔が複雑な意味を含んで見えたり、品をそこねたり、クールな作り笑いに見えたりするのです(美術史に登場する笑顔描きの名手にフランス・ハルスという画家がいます。ハルスは笑顔が本当に上手い!心の内側すら描き出しているかのようです)。

笑顔の程よいニュアンスを出すために苦心しているうちに時間は流れ、いつの間にか締切り前日午前0時!画面は混迷の底なし沼にはまり込んだような状態。
このまま提出したら、出来上がったポスターを見る人たちはどんな気持ちになるだろう・・・しかし、これ以上仕上がりを遅らせるわけにはいかない。追い詰められました。
「もうだめだ!」と思った時、「ほんとにそうかい?」という内なる声が聞こえたような気がしました。
そうか、ここまでにかけた時間や手数を残して何とかしようとしたから迷路の行き止まりに来ていたのか。
間に合うかどうか分からないけれど、思いきって画面の大半をガラッと描き直す事にしました。時間との勝負。追われ焦る気持ちをなだめながらプロセスをひとつひとつ進めました。
水彩画を描くための厚手の紙に下描きし直し、透明水彩絵具で着彩。切り抜いてキャンバスにコラージュ(貼り込み)。全体を調整するための加筆。
そしてどうにか締切日の朝に完成。
願ったイメージがうまく伝わるかは分かりませんが、自分なりの手応えは感じ、嬉しく思いました。無理と思ったけれど無理ではなかった!やってみて良かったと安堵しました。

今回のポスターが皆様にとっての音楽の愉しみや嬉しさに少しでも役立つものであれば望外の喜びです。この機会を頂いたことに深く感謝申し上げます。
*文字組みやキャッチコピーはデザイナー・西谷友希さんによるものです。いつも辛抱強く誠実な仕事でコスキンエンハポンポスター制作を支えて下さっています。ありがとうございます。

 

 

 

2019年(※台風により中止)のポスター ▶

 

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